top of page

#ぴろーとーく。「円について。」

2026年2月3日

※性暴力についての記述があります。
直接的な描写はありませんが、ご自身の体調とご相談の上、ご無理のないようにしてください。

※性暴力についての記述があります。

直接的な描写はありませんが、ご自身の体調とご相談の上、ご無理のないようにしてください。

※自身の作品について、振り返る目的で書いています。作家として、センシティブなテーマを扱うことについて、現時点での考えを書きました。

誰かを批判したり、告発する意図はありません。

ご理解いただきますよう、よろしくお願いいたします。


*******************


『パコちゃん』の連載中、彼女への視線が本当に辛かった。

読者からの視線だけでなく、担当編集者からも。

彼女について、みんなどういうふうに受け止めていたのだろう…。


まず、著者としてはっきりさせておく。

円は、性暴力サバイバーだ。


こうやって、はっきりとした言葉を出すだけで、身が縮こまるような、胸の辺りをぎゅっと握り潰されるような、そんな感覚になる。

作中では、あえてこういうはっきりした言葉を使わずに、濁した描き方をした。

特に、連載の序盤は、彼女の身に何が起こったのか、明らかにしていなかった。

2巻収録話あたりから、徐々に何があったのか明らかにしていく形をとったが、それでも彼女への読者からの視線は、鋭く冷たいものだった。

ある意味、リアルだな。と思う。


「二次加害とは、こういうことなんだな。」

と、本当に辛かった。


担当編集にも、打ち合わせでは、彼女の背景について、濁した伝え方をしていた。

だから、「あつしに執着している、パコちゃんの恋敵」的な、わかりやすい「メンヘラ女」みたいな捉えられ方をしていた。

彼女の背景について、担当としっかり共有できていなかったことが、読者への誤った伝わり方の原因のひとつかもしれない。


これは、私の責任でもある。

性暴力の被害者を扱うことに、作家としても、一人の女性としても、覚悟が定まり切っていなかった。

「自分のような未熟な作家が扱っていいテーマなのだろうか…。」

という不安があった。


それでも、連載の序盤(円初登場回のあとの打ち合わせだったと思う。)で、担当に

「円のような、心に傷を負った若者を描くことに不安がある」

ということは相談していた。

でも、私の深刻さは、そこまで伝わっていなかった。

「作家は、経験してないことを描くのが普通だから、気にしなくていい」

というようなことを言われた気がする。


作品を読んだ人はわかるとおり、円はわかりやすく「かわいそう」な被害者ではない。

幼馴染のあつしへの依存と執着。

そして、恐らくはSNS経由で援助交際をしている。

彼女は憎まれ口をたたくし、自分が「女性」であることを、ある意味で利用してもいる。

でも、それは私の中でのリアル。


だから、物語の終盤で、彼女に何があったのかということを明かしても、読者たちの彼女への視線は変わらなかった。


もしかしたら、違った感想もあったのかもしれない。でも、私には見つけられなかった。

いつだって、攻撃的な声の方が先に届く。


著者として、彼女を守りきれなかったことは、残念だと思う。掲載の都合で、彼女の救済までを描くことができなかった。

でも、何が彼女にとっての救済なのだろう…。

時間があったところで、その答えが出たかはわからない。


初連載。

担当編集者に、自分が描きたい「性」のことを、正しい形で共有する勇気がなかった。

異性。仕事相手。新人作家。作品のキャッチコピーが「三十路メンヘラ泥沼恋愛譚」。

女性として、無意識にどういうことを求められているかを察して、そのように振る舞っていた。

でも、これは「作家」としての私だけに起こってることじゃない。

人生で、作家じゃない時間の方が長かった私が、生きていく中で身につけた、社会との関わり方。


『パコちゃん』は、私の中での評価が難しい。

でも、大切な作品ではある。


円。今どうしてるだろうか。

彼女は賢くて、勇気のある女の子。


私が今まで描いた作品の中で、一番強い女の子。

このサイトに掲載している全ての作品や文章の無断転載を禁じます。

© 我妻ひかり
bottom of page